『平穏』 を翻訳する。
なだらかな丘を歩くこと。
7月14日
午前9:30
目黒通りを車で走らせながら、
35度を越える灼熱の都内の景色を見る。
ドリンクホルダーの水に水滴が映る。
数ヶ月ぶりのライブ演奏に、
鼓動が冷蔵庫のように少し唸っている。
『平穏』な日々の中で、
私が行う演奏というのは、
私にとって穏やかな日なのか。
否か。
去年、文筆家のように亡くなった祖母と、
4年前、動物から静物になった友人を、
いつもと同じに、山のよう眺めた。
灼けたハンドルに手を置いて、
バス停に並ぶ親子連れの前を通り過ぎ、
クリーニング業の運搬士がハッチを開けた。
夕飯の献立のように啓示的というか、
信頼を寄せる作家の次のページに書かれた様に、
『生こそ平穏』という文字が鳴った。
私の冷蔵庫はしばらく
物事を冷やすに申し分なく働きそうだった。
ー谷川くんとの日々ー
演奏は首尾よくいったはずだ。
J&Cの演奏時間は予定を大幅に超えていたのに、
僕らは全く気がつかなかった。
私は予てから言っている。
先にセットリストを公開するのはどうかと。
私が行く観劇はクラシックか、
能や狂言に行くが演目は決まっている。
予習して行く楽しみ方の方が、
個人的には好きだ。
招待して頂くLiveでは、
大抵入場時にセットリストを嫌が応にももらう訳だ。
曲順を先に知ることは何ということでもない。
だから、なかなか演奏が進まない頃合いを見て、
『おい、曲数減らすなよ!』
という声がけが必要だ。
いや、そんなことは必要ではない。
J&Cのとても愉快な演奏を終えてから、
夜は観劇にご招待していただいた。
押上駅で夕食難民になりながら、
私たちは夕餉をともにした。
さてTourが始まり。
平穏な日々の中で、
お会いしましょう。
Kenji Ayabe