1月、まだ春が紙のように薄い頃。
■1月のAyabe家の珈琲豆
エルサルバドル:フアユア地区サンタ・リタ農園
エチオピア:イルガチェフェ地区 イルガチェフェ G1
ブラジル:ボンスセッソ ボンジャルディン農園
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朝の起きがけにコーヒー豆を削る日々だけはずっと変わることなく続いている。
「グラノーラの量、少し減らしたら」と言われることはあっても、「1度に挽く量と粗さどうなの」と聞かれることはない。
絵画の好み、音楽の趣向と同じに。
■読んだ本
アントン・チェーホフ:『可愛い女 犬を連れた奥さん』
リチャード・ブローティガン:『西瓜糖の日々』『不運な女』
福岡伸一:『生物と無生物のあいだ』
山本周五郎:『季節のない街』
佐伯啓思:『自由と民主主義をもうやめる』
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義母から戴いたチェーホフ。ブローティガンはそれぞれ、もう10回以上は目を通しているのに、ぼくにとって、ずっと新作なまま。
移動時間の長い電車へ乗り込む前に駆け込んだ書店で、久しぶりに山本周五郎さんの作品を手にとった。永遠に美しい日本文学。
■美術館
原美術館:エリザベス・ペイトン『 Still life:静 / 生 』
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大井町駅から地図も(もちろん携帯もないわけで)持たず、散歩しながら向かう。こういう時間がぼくにはとっても楽しい。
古い路地や老舗色の看板に、大げさに感嘆しながら、とにかく歩くけば、いつの間にやら北品川へ到着するもんだ。
展示を見て、いつものテラスで珈琲でも飲もうとCafeへ入ると、おじさまがグラスビールをあおっている。
わたしも「ビールください」「ビンとグラスはどちら?」
「ビンをください」
午後14時のカフェダールに、アサヒの中瓶(まさかの)を飲みながら、新聞を真っ赤な顔で読んでいたわけ。
■こどもが生まれて
2017年1月25日:綾部 紙春(しはる)
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わたしとは違って、指が細くて長い男の子。
去年の夏過ぎにいちばん最初に浮んだ名前、
まだ春が、紙のように薄い頃に生まれる子。
彼の匂いが、ふと街で、眠りの中で、洗濯ものを干しながら、
どこからともなく香ってくる。
日差しを浴びた葉脈のように、
君に透ける生命に見とれてしまう。
素敵な日々を。
Kenji Ayabe