kenji ayabe

NOTE

5月 備忘録

 

5月というスープを飲むために、

大袈裟でなく、いつか私は

アメリカ鱒釣りのクロークの源流へと、

辿り着かなければならない。

 

 

5月19日:『わたしの生誕日に』

神奈川県にある、三浦半島西部に位置した葉山町へ車で向かう。

腰かけた椅子が、このくらい柔らかければいいなと

潮風はわたしにそう思わせた。

 

 

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撮影=粂絢哉

 

 

過去に、わたしの誕生を喜んでくれた人々をよそにして、

となりで粂くんが、世界でたったひとつだけ描かれた地図のような顔つきをすれば、

毎年同じようなよく晴れた祝祭日を過ごすことができる。

 

 

育った家族間にはたえず、砂浜の波打ち際に干上がったクラゲのような半透明な問題があった。

電話のコード線に溜まったほこりのような会話の沈黙とはちがう、

拭えない場所にときどき雨が降るのだった。

 

 

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撮影=粂絢哉

 

 

愛するには限界がある。

人間である以上、ルールを守らなければならない。

 

夢の中でさえ、

アーネスト・ヘミングウェイに会えないように。

 

 

6月29日:『6月の仕様書』

新代田FEVERにて、

U&DESIGNというバンドで演奏をします。

 

 

どんなバンドだとたずねられたら、

 

「幼少期に書いた遺言書」みたいに、

にわかに微笑みながら、でもちょっと美しいんだよ。

 

とでも、いっておこう。

 

 

 

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撮影=粂絢哉

 

 

Kenji Ayabe

4月後半 備忘録

 

台所にある 「若草の4月」という小瓶に入った

調味料が切れるようにして。

 

 

または、

テーブルにこぼれた「薄いねむりの4月」を

乾いた布巾で拭ききれば。

 

 

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某日の調理:『PHS』

自分のPHSが、行き先も告げづ私の前から去っていった。

まるで、30日しか存在できない4月のように。

 

 

4月21日:『赤レンガ倉庫』

初めて訪れる、横浜赤レンガ倉庫にて

谷川“銀玉”正憲が生演奏する舞台「まゆをひそめて、僕を笑って」を観劇。

馬車道を信号待ちをしていると、修学旅行高校生に

「赤レンガ倉庫はどちらでしょうか」と尋ねられるも、

「実は、僕も分からないで歩いているのですよ」と伝えると

いささか不審な顔で。

 

 

4月20日:『代官山と恵比寿』

新しいエスプレッソ店や服店を巡ったり。

眼鏡店Continureへ素敵な人に会いにいったり。

人に会っている時間て、

それだけで幸せ。

 

 

再び某日の調理:『訪宅』

友人が自宅を訪れてくれるとき、

私は、珈琲を挽き、淹れる。

そうやって、余白のできたわずかな距離と時間が

これからもっと愛おしくなってくるはず。

 

 

私の5月へ

ようこそ。

 

 

Kenji Ayabe