kenji ayabe

LETTER

熟れた咳をした鳥

 

パリ出身のその鳥は

フランソワーズ・サガンの手記の、

第2章に書かれたとこを誇りにしていた。

 

字を読める仲間は居なかった。

最近ではポプラの枝で糞をするとき、

咳をするのが癖になった。

 

彼はいつも好んで岬を飛んだ。

夕方になると郊外を出て、

できるだけ鳥気のない遠回りの空を選んだ。

 

彼のただ一人の理解者の飼い主は、

5年前に肺炎で死んだ。

 

老人は鳥に向かって、最期にこう言った。

「もう誰にも、飼われちゃいけないよ」

 

ときどき、Cafeのテーブルに羽を休めると、

幼い女の子が走ってきて、

ビスケットをくれる時がある。

 

首を前に2回、

深くすぼめるようにしてから言った。

 

「2章というのは、小説の良し悪しを決めるんだ。

サガンを知っているだろ?

彼女は、私が象徴的であることを知っているのだよ」

 

 

Kenji Ayabe