kenji ayabe

LETTER

定型的なグッドラック

 

話しがいのない聞き手を前に

宙に空をきって身振りをつづける青年。

 

老人は表情をなくしたのではなかった。

 

彼は生涯、自分についた顔(仮面)が気に入らなかった。

「そんな歌詞は、クソくらえだ!」

 

と言うのにも、

眉毛ひとつ動かさなかった。

 

30年前、彼はリチャード・ブローティガンになることを

決意したのだった。

 

49歳の時に銃をくわえ終え、

妙なくらい完全に死にきったその人に。

 

Kenji Ayabe